令和8年7月28日に熊本で発生した地震による休業・欠勤時の給与の取扱いと公的支援制度について

公開日:2026年7月30日対象:熊本地震の影響を受けられている企業の経営者様・人事ご担当者様

重要なお知らせ

2026年7月28日16時27分頃に発生した地震により、熊本県内では最大震度7を観測いたしました。被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。

今回のような大規模災害の際には、厚生労働省が労働基準法・労働契約法に関するQ&Aを公表するのが通例です(令和6年能登半島地震、令和元年台風第15号、東日本大震災などの際にも同様のQ&Aが公表されています)。本稿では、こうした過去の公式Q&Aで示されている考え方と、災害救助法の適用に伴う特例措置とをあわせて整理し、給与実務でよくご質問いただく点をQ&A形式でご案内します。制度の詳細は今後変更・追加される可能性がありますので、あわせてご留意ください。

1. 休業・欠勤時の給与の取扱いQ&A

Q1建物や設備に被害はありませんが、安全確保のため会社の判断で休業とします。休業手当は必要ですか?

原則として必要です。労働基準法第26条は、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合、平均賃金の100分の60以上の手当(休業手当)を支払うよう義務付けています。会社が自主的な判断で休業を決めたケースは、基本的にこれに該当します。

年次有給休暇の消化ではなく、就業規則等に定める特別休暇・災害休暇として、通常の賃金または平均賃金の60%以上を支払う形での対応をご検討ください。

出典:労働基準法第26条/厚生労働省「災害に伴う労働基準法等に関するQ&A」(令和6年能登半島地震ほか、災害発生時に順次公表)

Q2建物の倒壊、断水・停電の継続、行政による操業停止命令などにより休業せざるを得ません。この場合も休業手当は必要ですか?

厚生労働省のQ&Aでは、休業手当の支払義務が生じない「不可抗力」に該当するかどうかを、次の2つの要件で判断するとしています。

①その原因が事業の外部より発生した事故であること
②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること

この2要件をいずれも満たす場合は、原則として休業手当の支払義務は生じないと考えられます。建物の倒壊や断水・停電の継続、行政命令による操業不能などは、この不可抗力に該当しうる例として挙げられています。

ただし、雇用調整助成金の利用を検討される場合は、休業手当の支払いが助成の前提要件となる点にご注意ください。

出典:厚生労働省「令和6年能登半島地震に伴う労働基準法や労働契約法等に関するQ&A」Q1-4等

Q3自社の建物は無事ですが、取引先が被災した影響で仕事が回らず休業させる場合はどうですか?

この場合は原則として「使用者の責に帰すべき事由」による休業に該当し、休業手当の支払義務が生じるとされています。

もっとも、当該取引先への依存度や、他の取引先・調達手段への代替可能性なども総合的に勘案し、例外的に不可抗力に該当すると判断されるケースもあり得るとされています。個別の事情によって判断が分かれやすい類型ですので、該当しそうな場合は事前にご相談ください。

出典:厚生労働省「令和6年能登半島地震に伴う労働基準法や労働契約法等に関するQ&A」Q1-5等

Q4従業員が自宅の被災、道路の寸断、公共交通機関の運休、学校の休校による保育などの事情で出社できません。欠勤控除してよいですか?

従業員本人に責任のない事情ですので、慎重な対応が必要です。厚生労働省のQ&Aでも、こうしたケースの給与の取扱いについては「まずは就業規則等の定めに従うこと」、定めがない場合は「労使で十分に話し合い、労働者の不利益をできる限り回避するよう努めること」が大切だとされています。

法律上必ず有給として扱わなければならないという規定はありませんが、一律に欠勤控除とすることは従業員との信頼関係を損なうおそれがあります。特別休暇・災害休暇等での対応をご検討ください。

出典:厚生労働省「令和6年能登半島地震に伴う労働基準法や労働契約法等に関するQ&A」Q12-2等

Q5出社できない従業員に、年次有給休暇を消化してもらうよう会社から指示してよいですか?

年次有給休暇は、労働基準法上「労働者が請求する時季に与えなければならない」ものであり、会社が一方的に取得を命じる性質のものではありません。従業員本人が希望する場合に限り、通常の年次有給休暇として処理することは可能です。

なお、請求された時季での取得が事業の正常な運営を妨げる場合には、使用者は他の時季への変更を求めることができますが、災害対応時に安易にこの権利を使うことは推奨されません。

出典:厚生労働省「令和6年能登半島地震に伴う労働基準法や労働契約法等に関するQ&A」Q9-1・Q9-2等

上記はいずれも一般的な考え方の整理であり、実際の判断は個々の事情によって分かれます。「このケースはどう扱えばよいか」といったご相談がございましたら、いつでもお気軽にお問い合わせください。

2. 災害救助法の適用と公的支援制度

熊本県の一部地域に災害救助法が適用されたことに伴い、雇用・労働に関する特例措置の対象地域が定められています。2026年7月28日時点(熊本県公表)で、対象は以下の10市10町1村です。

市(10) 熊本市、八代市、水俣市、山鹿市、菊池市、宇土市、上天草市、宇城市、天草市、合志市
町村(10町1村) 下益城郡美里町、菊池郡大津町、菊池郡菊陽町、阿蘇郡西原村、上益城郡御船町、上益城郡嘉島町、上益城郡益城町、上益城郡甲佐町、八代郡氷川町、葦北郡芦北町、葦北郡津奈木町
支援①雇用保険の基本手当(失業給付)の特例

上記の適用地域に所在する事業所に雇用されている方で、事業所が災害を受けたことによりやむを得ず休業し、一時的に離職を余儀なくされた方等を対象に、基本手当の特例措置が設けられます。対象要件やお手続きの詳細は、最寄りのハローワーク(公共職業安定所)または熊本労働局にご確認ください。

支援②雇用調整助成金

従業員を休業させ、休業手当を支払った事業主を対象とする助成金制度です。今回の地震に対応した特例措置(生産指標要件の緩和など)の詳細は、本稿作成時点(2026年7月30日)ではまだ公表されておりません。過去の大規模災害では、直接被害だけでなく取引先の被災等による間接的な影響を受けた事業主も対象に含める形で特例が設けられた例があります。当法人でも内容を確認次第、あらためて詳細をご案内いたします。

参考リンク・出典

今後、雇用調整助成金の特例や、今回の地震に特化した労働基準法Q&Aなどが公表され次第、本ページにて随時更新してまいります。個別の状況についてご不明な点がございましたら、お気軽に当法人までご相談ください。

社会保険労務士法人アスワン

お問い合わせ:info@aswan-sr.jp
本お知らせは2026年7月30日時点で確認できた公的情報等をもとに作成した一般的な情報提供であり、個別の法的助言に代わるものではありません。制度の詳細や適用可否は個々の状況により異なりますので、具体的な対応については当法人までご相談ください。

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